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2010年8月 5日 (木)

話を聞く極意は「全力で●●」

こんにちは、グロービスの本田です。

仕事柄、人の相談に乗ったり、お話を伺ったりする機会があります。
個人的にも、人の話を聞くことが大好きです。
(ですので、仕事、という感覚があまりありません 笑)

私が人の話を聞くときに、大事にしている言葉があります。

「全力で、何もしないことに傾注する」

これは故・河合隼雄氏がよく仰っていた言葉です。
カウンセリングの極意、という感じでしょうか。

心理カウンセリングなどメンタルヘルスに関わる話をする際には、
とくに有効な処し方かと思いますが、(こういう場合、本音を
話してくれるまで「ひたすら待つ」ことが大事だそうです)
私たちのビジネスの現場においても非常に意味のある言葉だと思います。

議論や意思決定をする際などは思考をフル回転させながら聞くことは重要です。
内容を構造化しながら、仮説、ロジックを構築しながら聞くことは重要です。

しかし、「聞く」ことに徹する状況も大いにあると思います。

たとえば部下の仕事の目標などを語ってもらう場
仕事に対して行き詰っている同僚や部下の本音を聞き出すケース。 
組織の在り方を考えるような「対話」の場
その他、深刻な相談を受けた場合など、です。

こういう場合、「聞く」姿勢が無ければ
批判ばかりして対話の場を乱してしまったり、
部下や同僚から「相談しよう」と思ってもらえなかったりします。

私もこういう場合に、「聞く姿勢が出来ていないな」と思い、
2つの意味において「何もしない」ように心がけています。

「身体」と「思考」において「何もしない」ように心がけるのです。

私たちは「人の話を聞く」ことに慣れていません。

まず、聞く練習をしようという機会は少ない。
また、聞く姿は自分では見えない。
そして、「聞いている」が、本当の意味では「聞いていない」。

こんなことが考えられますね。

顧客や社内へのプレゼンなど、「話すこと」の必要に迫られて
練習しよう、練習しなければと思う機会はよくあります。
その際、鏡に向かって練習をしたり、音声を記録して聴き直したりして
話し方の練習をすることは出来ます。
また、実際に話す際にも、相手の反応などを見たりすることで
学ぶことが出来ます。 

しかし、「聞く練習」というとイメージが付きませんよね。
聞いている自分の声をなかなか録音しようとは思いません。
同時に、聞いている無意識の姿勢は見えません。
私たちは話す練習はしても、聞く練習はあまり行わないのです。

そして、もうひとつ、こちらが重要ですが、
「聞いている」が、本当の意味では「聞いていない」ということです。

人間は自分の聞きたいことしか聞こうとしません。
人間の思考というものは、先入観や個人の判断、その時の感情などによって
バイアスがかかっている、ということです。

つまり、頭の中で無意識に「判断したり」「都合良く解釈したり」しながら
聞いていて、本当の意味では「相手の話を聞いていない」
のです。

感情やその他の制約にも左右されます。
「忙しいから早く終わらせたい」と感じている時は、無意識に
時計を見てしまいます。
「興味ないな」と感じているときは椅子の背にもたれたり、
腕組みをしたり、指でリズムを取ったり。
その他、様々な行為を無意識に行ってしまっています。
(気づかずにやっているケースが多いです。)

これらの行為は、聞かれている(話をしている)側からすれば、
無意識の「拒否のポーズ」であると明らかに伝わります。

聞く側は、言葉では「腹を割って、なんでも話してくれ」と言いながら(笑)
身体では拒否しているケースが実に多いのです。

皆さんも記憶があるのではないでしょうか?
「どうも喋りにくいな?聞いてもらえている感じがしないな」

そして、聞く立場の自分を思い浮かべると、
無意識に「やってしまっているな…」と思う方が多いのではないでしょうか?

私も大いに「やってしまっているな…」と感じています。
人間は無意識に「聞く」という行為に、余計なことを付け加えて、
純粋に聞く、という行為を行っていないのですね。

つまり、「何もしない」というよりは、「無意識に何かをやってしまうので」
「何もしないように心掛ける」というのが真意に近いですね。

※実際には、身体をシンクロ(一緒にうなずく、トーンを合わす)させたり、
 問いを中心に話を促したりして話しやすい「場」を提供するようにしています。

また、結局のところ相談を受けても「決断は相手」です。
とくにキャリアに関して相談を受ける場合なども、重要な決断は
本人がしないといけない、ということを忘れてはいけません。

部下やプロジェクトメンバーの仕事のコミットメントを高めるには
「やらされ感」ではダメなので自分自身に語らせなければなりません。

つまり、聞く側にできるのは、相手の心の整理のみだと思います。

だからこそ、余計なことをせずに「聞く」、
そして聞くときには「何もしないように傾注する」ことが
重要になるのだと思います。

少し話が逸れますが、
世界最高峰の有能な経営者たちは、話を聞く姿勢が人並みすぐれている、
ということを聞きます。それも頷ける話であると思います。 

今の時代、情報が氾濫し、Googleなどで調べれば二次、三次情報は
誰でも手にすることができます。

では、優秀なビジネスリーダーはどんな情報を手に入れないといけないか?
それは言うまでもなく有用な一次情報、つまり生の声です。
生きた情報が集まってくる人にチャンスが巡ってくる時代なのです。

だからこそ、最高峰の経営者たちには、生の声を得ることができ、
聞く姿勢が人並み以上に備わっている、もしくは鍛えられているのだと思います。

人の話を聞く。簡単なようですが非常に難しいです。
皆さんも「全力で何もしないように傾注し、話を聞く」ことを
試してみてはいかがでしょうか?

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